No.51 『1か月健診』
出産後初めての1か月健診は、赤ちゃんが順調に育っているかどうかを確認する重要な
機会です。大半は、産科もしくは産科施設に併設された小児科で行われていますが、
例えば、助産院で出産、あるいは里帰り先で健診を希望している場合などは、開業小児科
医院を受診することもあります。
妊娠中から1か月健診まで、お母さんや元気に産まれてきた赤ちゃんのケアは産科中心に
行われています。“自分をよく知っている”産科医やスタッフの継続的サポートはお母さんに
安心感をもたらすでしょう。
しかし、1か月健診を境に赤ちゃんのサポートは小児科にスイッチされます。
産科退院後、お母さんが自分なりに育児に取り組み、不安や疑問を抱えているこの時期に
小児科ではどのような支援が望まれるのでしょうか。
2月に娘の出産に立ち会い、1か月健診を通して考える機会がありました。
待合室で気になる会話
祖母 : 「母乳が足りないと思うの。もっとミルクを足せばいいのに・・・」
「赤ちゃんが泣き叫ぶから、内緒で隠しミルクを与えているのよ」
母親 : 「40歳過ぎての育児は辛い・・・」
「母には育児を助けてもらっているので、カチンとくるけど聞き流している」
「どうすればもっと母乳が出るようになるのかな?」
小児科医には、退院時からの体重増加が200gと少ないため、人工乳を補足するように
指示されたそうです。 しかし、会話の中にあった 「母乳分泌量を増やす方法」 や、
母親や祖母へのメンタル面でのサポート、人工乳の補足の具体的な方法についての
情報提供はなかったようです。
1か月健診を小児科医が行うメリット
新生児期(生後28日まで)に発見できなかった異常を、専門性を生かした診療で診断・
治療・フォローすることができる
健診後も、ワクチン接種、定期健診、折々の診察など長期にわたって、母子のサポート
ができる
ワクチン接種率が高くなる
最新の育児情報を提供できる
(参考 : 外来小児科2014.第17巻 第1号 「1か月健診の意義:小児科医の立場から」)
小児科における1か月健診時の母乳育児支援
一般的な発育状況の評価 (基礎疾患がない、黄疸の消失)
母子手帳の成長発育曲線上に体重・身長を正確に記入して確認する
授乳状態の評価
産科入院中の授乳に関する問題が解決されているか(例えば、吸着困難、乳頭痛など)、
新たな問題が起きていないか(例えば、うつ状態、授乳環境など)、
授乳回数、授乳間隔、授乳タイミング、乳頭保護器の使用などを確認する
「体重が増えない」、「乳頭痛がある」
ポジショニング&ラッチオン(授乳姿勢、吸いつきなどの授乳状況)を確認し、
母乳が十分に飲みとれているかどうかみる
「母乳不足感」
体重、身長が十分に増加していることを確認する
安易に人工乳を勧めない
母親の抱く不安の原因を考える
混合栄養の場合、必要な補足量の見直しを行う (湯冷ましや果汁などは不要)
母乳育児支援は、妊娠中から退院後まで継続した母親への支援と、関係する施設や人々
との間での基本的情報の共有化が大切です。正期産はもとより高年初産、多胎妊娠、若年や
未婚妊娠、家族の支援が受けられない母親に対しても、向き合っていかなければなりません。
診察室のこちら側に座ったことで、母親の不安や疑問が隠れていることもあることに気づきまし
た。初めての健診では育児をねぎらい、児の成長を一緒に喜び、卒乳まで継続してサポートして
いくことを伝えようと思いました。
とみもと小児科クリニック 母乳育児支援外来 TAKAKO FURUKAWA