医療安全のために
航空機事故は、いったん起こればその結果が重大になるために、航空機の設計にあたっては、事故を想定して被害を最小限にくいとめる思想(fail safe)で設計されます。
医療事故もそれと同じだと思うのです。医療事故の報道では 「過労のため」 「不注意のため」 といった言葉が並びますが、人がやっていることである限り、どんなに細心の注意を払っても「医療ミス」は避けられないものだと認識しなければなりません。したがって、重要なことは「誰が、どんな状態でやってもミスを起こさない」、あるいは「起きても重大な結果につながらない」といったシステムを作ることです。
また、ミスの姿を明らかにすることも重要です。ミスを隠してしまえば、次に再び同じミスが繰り返されます。私たちは「ミス」を神様がくれた重大な警告として、強い反省の下に安全な医療を確立するための方策に役立てていきます。
小児科の外来で最もミスが起こりやすいのは予防接種・ワクチン接種のときです。違うワクチンを打ってしまう。特にインフルエンザワクチンでは量を間違う、ワクチン同士の接種間隔を間違う、有効期限切れのワクチンを打ってしまう。といったミスが生じます。
2008年の小児科学会報告では、実に調査した34自治体だけの報告件数だけでも、年間200~300例の予防接種の「間違い事故」が起こり、中でも「予防接種有効期限切れ」「接種回数の間違い」「接種間隔、回数の間違い」「対象年齢の間違い」が多かったとされています。
しかし、これらは自治体にきちんと報告されているものであり、実際には氷山の一角で、実際の事故件数はかなり多い可能性があります。
●予防接種事故を防ぐために当院でとっている事故防止策は! | |
①ワクチンごとに色分けしたトレーに入れて色で警告します。 このやり方は外来小児科学会でも他院から発表されていま した。考えることはみな同じです。 |
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②ワクチンはバイアル製剤から注射筒に詰めてしまうと 内容が分かりにくくなるので、バイアル製剤以外に注射筒 製剤のあるものではできる限り注射筒製剤を採用する | |
③接種前に予防接種の種類を保護者に示して、大きな声で確認していただきます。 | |
④同様に有効期限も 大きな声でね 。 | |
⑤インフルエンザワクチンでは、特に兄弟で接種する際に接種量の間違いが起こりやすいので、接種テーブル上には一人分のワクチンしか準備をしません。 | |
必ず一方通行 | |
⑥使用済みのワクチンは、専用の箱に廃棄し、決して接種トレーに戻すことはしません。 接種トレーに戻すと、使用済みの針を他の人に刺してしまう事故が起こりえます。 | |
●小児科外来で行う処置のうち「点滴」は事故の起こりやすいものの一つです。 | |
①まず、外来でふだん用いる薬剤は、万が一、別の人に入っても大きな問題を起こさないものでそろえておく必要があります。
②鎮静・麻酔薬(ホリゾン・イソゾールなど)は、使用前に全量入っても問題を起こさない量に分注して準備します。
③点滴の量、速度も問題となります。脱水の状態に応じて多めに点滴することもあり得ますが、大量の点滴が万が一、一気に落ちてしまった場合でも障害を最小限にするために、500mlボトルを用いず、200mlボトルで取り換えていくようにします。 ④点滴ベッドからの転落事故を防ぐために、はじめからベッドでなく、小上がりの点滴スペースとしています。 |
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