No.2 『ポジショニング&ラッチ・オン』

 お母さんがリラックスした状態で楽に授乳ができ、赤ちゃんが上手に母乳を飲みとることができれば、母乳育児は続けていくことができるでしょう。しかし、産科施設を退院したばかりの頃はなかなか大変です。

実際に当院における1か月健診前の相談で多いのは、「うまく吸わせられない」、「母乳不足感」、「体重増加の不安」、「乳頭トラブル」です。

授乳の様子を見せていただくと共通して気付くことがあります。それは、お母さんの体が赤ちゃんに寄るような姿勢で吸わせていること。お母さんの身体は斜めに傾いていて、肩から首、そして背中がかなり緊張しています。赤ちゃんの方も落ち着かないように見受けられます。                                

おちょぼ口で吸う、うまく吸えず反り返って泣く、舌を巻きあげてしまう、吸う力が弱い、時間がかかるなど、上手に母乳を飲みとれていない様子です。これではお母さん、赤ちゃん共にストレスの多い授乳タイムとなってしまいますね。同じようなお悩みを持つお母さんも多いのではないでしょうか。

「楽ちん授乳」を一つ提案します。

● 壁などに寄り掛かってもらい、あぐらを組み、手ごろな大きさのクッションを使用しながら赤ちゃんの鼻が お母さんの胸の高さまでくるように調節します。                                               

● 赤ちゃんの耳・肩・腰を結ぶラインが一直線になるように抱き、赤ちゃんの方をお母さん側に引き寄せるように密着させます。

● 抱き方はいろいろありますが、帝王切開術後の授乳や、夜間の授乳時、またお母さんが疲れている時には添え乳もおすすめ。

● 「吸わせ方」は、赤ちゃんの鼻を乳頭に向き合うようにして、タイミングを合わせて深く吸いつかせます。横から見ると、赤ちゃんの口はアサガオの花が咲いたように、大きく開いています。この時、赤ちゃんの顎がお母さんの乳房についているようにします。深く上手に吸っている時は乳頭痛がありません。

 

母乳育児をするにあたり、授乳姿勢や吸わせ方はとても大事なことです。それを表す言葉として「ポジショニング」と「ラッチ・オン」があります。

●「ポジショニング」とは・・・(positioning : 抱き方、授乳姿勢)                                         授乳するときのお母さん、赤ちゃんのそれぞれの姿勢と身体の向かい合い方を指します                                              

●「ラッチ・オン」とは・・・(latch-on : 吸着、含ませ方、吸いつかせ方)                                               実際に乳房を含もうとするときの唇、舌の動き、                                                        お母さんが赤ちゃんを自分の方に引き寄せる身体の動きなど一連の動作を指します      

 

赤ちゃんは成長するに伴い、吸う力が日増しに強くなります。また毎日少しずつ学習し、知恵をつけながら遊び飲みもするようになります。お母さんが効果的なポジショニングやラッチ・オンのスキルを身につけることで、乳頭痛や傷、乳腺炎を予防し、また赤ちゃんが確実に母乳を飲みとることで、さらなる乳汁分泌の促進も期待できます。「ポジショニング」、「ラッチ・オン」は母乳育児を継続する「鍵」になるといえるのではないでしょうか。   

 とみもと小児科クリニック母乳育児支援外来  TAKAKO FURUKAWA (^0_0^)                                                                                                                

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