Q1.熱性けいれんって何?
生後6カ月から5才くらいまでの子どもが、風邪や突発性発疹などで熱を出したときに、急に意識を失って、全身のひきつけを起こすことがあります。そのような揚合に、熱の他にはけいれんを起こす異常(髄膜炎、脳症、てんかんなど)がみられない時、熱性けいれんと診断されます。
けいれんするときの体温は38℃以上のことがほとんどですが、中には37℃台でけいれんすることもあります。大多数は、熱が出てから2日以内にけいれんが起こります。
Q2.熱性けいれんの原因は?
脳が発達段階にあり、未熟性に基づいていると考えられていますが、詳しい原因はまだわかっていません。
Q3.熱性けいれんって珍しい病気なの?
子どもの15人~20人に1人くらいに見られる病気で、稀な病気ではありません。
Q4.熱性けいれんを起こすと熱を出すたびにけいれんするの?
熱性けいれんをおこした子どものうち、半分以上の子は1回だけのけいれんで再発はありません。残念ながら、30%程度の子に再発が見られますが、以下の4つの因子がなければ再発率は15%程度です。
□両親のいずれかに熱性けいれんがある
□1歳未満の発症
□発熱に気づいてから発作までの間隔が1時間以内
□発作時の体温が39℃以下
Q5.熱性けいれんを起こすと何か後遺症が出たりしないの?
特別な場合を除いて、熱性けいれんで後遺症が出ることはありません。何回か繰り返しても、それだけで後遺症をきたすことはありません。
Q6.熱性けいれんって治るの?てんかんになる?
年長になると自然にけいれんしなくなり、小学生になってからけいれんすることは稀です。また、大体2年間位けいれんがなければ安心できます。
熱性けいれん後にてんかんを発症する率は2.0~7.5%程度で,一般の人 (0.5~1%)よりやや高めですが、次の4つの因子がなければ可能性は低いといえます。
□熱性けいれんの発症前に別の神経学的異常がある
□両親・きょうだいにてんかんの人がいる
□複雑型熱性けいれん
I 部分発作(焦点性発作)
II けいれんの持続が15分以上
III 24時間以内のけいれん再発 のいずれか一つ以上
□発熱に気づいてから発作までの間隔が1時間以内
Q7.脳波検査は?
もともと脳波検査はてんかんの診断の目的で行われます。脳波に異常があるとてんかんを発症しやすいのは確かですが、てんかんに関連しないことも多く、ガイドラインでは「脳波検査は単純型熱性けいれんに対しては勧められない」とされています。特にけいれん発症7日以内の脳波は診断能力が低く、検査の意味がありません。神経学的に異常のない子に熱性けいれんの発作後7日以内といった早い時期に脳波検査を行うことはおすすめできません。
Q8.熱性けいれんって遺伝するの?
ご家族の中に、子どもの時に熱性けいれんを起こした方がいることか多いようです。背の高さや顔のつくりが似ているように、熱に対する脳の反応も似ているということです。
Q9.熱性けいれんを起こしやすい薬は?
第一世代抗ヒスタミン剤(ペリアクチン、テルギンGなど)、ザジテン、テオフィリンで熱性けいれんを誘発するとのデータはありませんが、けいれん発作を長引かせる恐れがあります。用いないほうが賢明です。
Q10.解熱剤は使っていいの?
解熱剤を使用して一旦熱が少し下がった後に熱が再上昇し、この際にけいれんが誘発されるので解熱剤を使ってはいけない」などといわれていましたが、これを明確に示したデータはなく、解熱剤の使用を制限する必要はありません。
Q11.ダイアップでけいれん予防するのはどんなとき?
1.当院では熱性けいれんを起こして受診した際にはダイアップでけいれんの再発予防を行います(別の意見もあります)。この薬はけいれん再発を14.8%→2.1%まで抑えることができます。
- 熱性けいれんは後遺症を起こさない良性のけいれんですが、いくら良性といってもけいれんを繰り返すのは親御さんにとっては気持ちのいいものではありません。このため、一部のお子さんでは発熱時に熱性けいれんを予防します。この再発予防の有効性は高いのですが、副反応もあることから以下の場合に適応を限ります。
適応基準
□①けいれんが1回だけでも15 分以上持続したもの(遷延性発作)
□②次の6項目のうち2つ以上を満たした熱性けいれんを2回以上繰り返す
□部分発作(焦点性発作)または24 時間以内に繰り返す
□熱性けいれん以前にある神経学的異常,発達の遅れ
□熱性けいれんまたはてんかんの家族歴
□1才未満の発症
□発熱に気づいてから発作までの間隔が1時間以内
□38℃未満での発作
熱性けいれんの予防方法
けいれんの再発予防としてけいれん止めの座薬(ダイアップ)を用います。以下の方法に従ってご使用ください。
使用薬剤 ダイアップ 4mg ・ 6mg
けいれん止めの座薬です。熱さましではありません。
使用方法
①熱を測って37.5℃以上の熱があったら
☞ 1本目のダイアップ座薬を入れる。
③8時間後に2本目のダイアップ座薬を入れる。
この場合熱が37.5℃以下になっていても入れてください。その後再発熱してけいれんに至ることがあります。結果的に大した熱でなかったとしても心配いりません。ダイアップの副作用は一時的な眠気やふらつきが生じることがありますが、数時間で自然に回復します。
投与はこの2回で終わりです。それ以上は特別な指示のない限り使用しないでください。2日目以降に起こるけいれんは熱性けいれん以外の病気もあり、けいれんが起きたために診断できることもあります。2日目以降にけいれん止めを使い続けると、逆に診断の遅れにつながることもあります。
いつまで予防が必要か?
熱性けいれんを反復する時期は初回発作から1年以内が70%,2年以内が90%と報告されていますので、最終発作から1~2年,もしくは年齢として4~5歳まで用いるのがよいと考えられます。
Q12.熱性けいれんを起こすと予防接種はできない?
熱性けいれんをおこしたお子さんだからといって、予防接種による副作用が強く出ることはありません。気にせず接種を受けていいといえます。以前はけいれんをおこした子は、基本的に1年間は接種を控えられていました。しかし考えてみれば、けいれんを起こしやすい子ほど予防接種で病気を予防しておく必要があります。現在当院では、けいれんから2カ月間は熱性けいれんを繰り返すかどうかなどの観察期間とし、その後に接種を実施しています。
けいれん発作時の応急処置
1. あわてず、冷静に判断する
通常のけいれんは数分で終わります。また、その数分で生命の危険が起こることはほとんどありません。発症時間と持続時間を記録しましょう。
2. 危険なものを取り除く
まわりから危険なものを取り除き、寝かせて衣服をゆるめる。
3. 顔を横に向ける
吐いたものがのどにつまらないように顔を横に向ける。
4. 発作が終わるまでそばにいて見守る
発作中に体をたたいたり、ロに物をかませたりする必要はありません。舌をかむことを心配する必要はありません。発作は人為的に止めるのは不可能ですから、よけいな処置は無用です。