近年、乳幼児の虐待件数が増加傾向にあり、その死因のトップが 「乳幼児揺さぶられ症候群」(Shaken Baby Syndrome:以下SBS)であることが知られています。 (Reece et al.,2000)
日本でも、昨年末に乳児の頭部を激しく揺さぶるなどの暴行を加え、多発性急性硬膜下血腫などのため一時重体にさせたとして、両親が逮捕された事件がありました。このようなニュースを聞くたびに、助産師として心が痛みます。
今回、国立成育医療研究センター研究所 成育社会医学研究部部長 藤原武男先生のセミナーを受講し、赤ちゃんの泣き行動を理解するための新しい考え方を学んできました。
「乳幼児揺さぶられ症候群」を予防するプログラムのひとつとしてご紹介します。
SBSは、乳児の「泣き」が引き金になっていることが様々な事例報告、実証研究から明らかになっています。発生時期は、乳児の泣きのピーク時期と重なり、生後2~3か月にピークを迎えます。日本では7~9か月にももう一度ピークがあることが報告されていますが、そのメカニズムについてはわかっていません。また、SBSは有意に救急車を呼んでいることから、故意ではなく、突発的に行ってしまっている可能性が高いと考えられています。赤ちゃんの泣き行動を学び、対応を知っておくことが予防の第一歩です。
生後2~3か月における乳児の泣きの特徴を知りましょう
PURPLEとは(Barr et al. pediatrics ,2009)
乳児の泣き方の特徴を、PURPLE(パープル)という英語の頭文字で表現
「パープルクライング」と呼ぶ理由は、親を悩ます乳児の泣き行動を示す英語の文字にあります
P : PEAK OF CRYING ピークがある
U : UNEXPECTED 予想できない
R : RESISTS SOOTHING なだめられない
P : PAIN‐LIKE FACE 痛そうな表情
L : LONG LASTING 長く続く
E : EVENING 夕方
赤ちゃんが泣く理由には、
◆ おなかがすいた ◆ ねむい ◆おしっこ・うんちがしたい ◆ さむい・あつい ◆ さみしいよ
さまざまな理由があります。
でも、覚えておいてください。
赤ちゃんは理由もなく泣くこともあるのです。
生後5か月までの間は特によく泣きます。
赤ちゃんに泣かれたら、いろいろな方法でなだめてみましょう
おなかがすいていたり、眠かったり、おむつが汚れていないかを確かめる
赤ちゃんを抱いて歩いたり、歌ったりする
お風呂に入れてあげる
散歩やドライブに行く
抱き寄せてスキンシップする
毎回うまくいくわけではありません。
泣く時間が減らせるかもしれませんが、なだめてもいつも効果があるとは限りません。
何か問題があって泣いているのか、医師にいつでも相談できることを忘れないでください
泣かれるとイライラするのはなぜでしょうか
思っていたよりもよく泣く
考えていたよりも大変
何をしても泣きやんでくれない
自分は悪い親で、間違ったことをしているような気がする
疲れてしまって、赤ちゃんを世話できていないことに罪悪感を覚える
親として失格だと思う
怒りを感じて動揺してもいいのです。
その気持ちにどう対処するのかが大切です。
泣き声からちょっと離れて、自分をいたわってあげてください。
必ず覚えておきましょう(泣かれてイライラするときに)
1.赤ちゃんを抱いて、なだめて、歩いて、語りかける
2.我慢しきれなかったらその場を離れてもかまいません
3.決して赤ちゃんを揺さぶったり、暴力を振るったりしないこと
揺さぶるとなぜ危険なのでしょうか
親がわが子を揺さぶり、暴力をふるう。第一の理由が泣かれること
赤ちゃんを揺さぶると、以下につながることもあります
◆ 失明 ◆けいれん ◆学習障害 ◆身体障害 ◆死亡
赤ちゃんを見てくれる全ての人に知ってもらいましょう
パープルクライングについて
正常に泣いても、とてもイライラさせられること
赤ちゃんを揺さぶることの危険性
赤ちゃんを安全な所に寝かせ、ひと息入れてもかまわないこと
我慢しきれなくなったらいつでも連絡してくれてよいこと
以上の内容は、National Center on Shaken Baby Syndromeの乳幼児揺さぶられ症候群防止プログラムの冊子より、一部抜粋して紹介しました。詳細は ホームページをご覧ください
http://dontshake.org/
とみもと小児科クリニック 母乳育児支援外来 TAKAKO FURUKAWA (^0_0^)