No.22 『先天性股関節脱臼』

 乳児健診に訪れる親子の服装も軽やかになり、手足を自由に動かす赤ちゃんの可愛らしいしぐさに思わず笑みがこぼれてしまいます。つい最近まで、おくるみに巻かれて来院される光景でしたから、季節の移り変わりを乳児健診の場でも感じられるのです。club

 赤ちゃんを仰向けに寝かせてみると、股と膝をMの字のように曲げた格好をします。             これが自然な格好です。母親の子宮内で過ごし、出産時は産道を通過できるように関節が柔らかい状態で生まれてきます。この柔らかな時期に無理な力や自由な動きを束縛すると股関節が脱臼してしまうことがあります。これが先天性股関節脱臼です。

大腿骨が骨盤の寛骨臼から外れる病気ですが、生まれたときに既に脱臼しているようなケースは少なくて、米国などでは「先天性」という呼び方はされなくなり亜脱臼や臼蓋形成不全とあわせて股関節形成不全と言われているそうです。                                                 疫学的には女児に、冬など寒い時期に、発生率は2:1と左に多いそうですが、お産に携わっていた者として何故なのか興味があるところです。

通常の赤ちゃんは、出生時、産科退院時、1か月健診時に産科医または小児科医の診察を受けて異常がなければ、3~4か月乳児健診に繋げます。                                       八戸市では生後90~120日の赤ちゃん対象に公費で股関節脱臼検診が行われていますが、《要再検》の赤ちゃんは、できるだけ早く専門医に診てもらうことが重要です。治療は軽度~重症度によって異なります。コアラ抱きをして日常生活に気をつけながら経過観察をしている赤ちゃんもいれば、リーメンビューゲルという装具をつけて早期に治療を開始される場合もあります。早期発見・早期治療がポイントですね!

●当院の母乳外来における主な相談内容は、、

  ・「コアラ抱きで授乳をしていると乳頭痛がある」 

  ・「リーメンビューゲルが気になり人工栄養法に切り替えたい」  

  ・「上手く吸わせられない、体重が増えない」

  などです。 

 ●ケアの内容として、

①授乳姿勢や乳頭の含ませ方の確認(ポジショニング&ラッチオンと言います)

②効果的に母乳を飲んでいるか発育チェック(身長・体重)

③乳頭トラブル予防のセルフケア

④エモーショナルサポート(ゆっくりお話を伺いながら精神的支援を行う)

⑤タッチケア (心と体が触れ合うことにより親子の絆を深めます)                                       

 などを行ってきました。

 

今回、「先天性股関節脱臼児の母乳育児支援」の研鑽を深めるために、

青森県立はまなす医療療育センタ―園長 盛島利文先生に御教示頂きました。(2011/05/19)

 

コアラ抱き 

P1010872   カエルの脚のように曲げて開いている/(原則の形)

  脚をできるだけ広げて体につけて抱く。

  (お母さんの腰にのせると少し楽です)

   基本の抱き方は、赤ちゃんのお尻を手で支え、頭を腕で支えます。

 授乳もコアラ抱き 

授乳姿勢が限られるため、乳頭痛、乳頭亀裂、白斑など乳頭トラブルを防ぐことが肝心です。効果的な授乳をするためにはポジショニング&ラッチオンを是非身につけてほしいと思います。そして、赤ちゃんの目を見て、語りかけながらゆったりと授乳しましょう。    

リーメンビューゲル

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   生後3~6か月頃から約2~4か月間装着します。

  原則的に入浴時のみ外し、寝る時もそのままです。

  肌着と靴下の上から装着して、

  自然な動きを妨げない衣類を着ます。

  装具は、ベルト調節により成長に対応できます。

    装着中はスキントラブル/首のまわりに注意が必要です。

 

 ●赤ちゃんの運動、動作

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   伸ばして引っ張らない  クロスさせない   無理にひねらない 

 閉じて  soon  屈曲させて  soon  伸展させる という一連の動きも NG!

 

 ●おむつ交換 

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 両手でお尻を持ち上げて交換します。

 股関節をしめつけないように、布おむつの場合は

 注意が必要です。

 

 

 ●タッチケア 『基本的にはOK』   

  P1010901                                                                                                                                               股関節、膝、足首には強いマッサージはNG! 

背中も強刺激を避け、ソフトマッサージを行います。

仙骨の周りを軽くマッサージしている様子です。 

 

スワドリング/Swaddle=「布でぐるぐる巻き」

   「泣きやまない眠らない赤ちゃんを寝かしつけるために効果がある」という育児法

   の1つですが、上半身だけでなく脚もしっかり固定してしまうと股関節脱臼を引き

   起こしてしまう可能性があるということで、NG!

 

その他、抱っこ紐、スリング、ベビーラックなどについても、赤ちゃんの脚を

   束縛せず自由に動かるものが基本であり、選ぶ時はファッション性よりも機能性を

   重視すること。

 

● 赤ちゃんの骨は軟骨部分が多いので、レントゲンで診ることの出来ない軟骨組

  織、軟部組織を超音波で診ることができます。触診、レントゲン、超音波を組み合

  わせて経過を見ていくことが重要である事を教えていただきました。

 

 歩行開始後に見つかる先天性股関節脱臼もあるそうです。

健診において重要な時期は生後3~4か月の頃であり、出生直後より赤ちゃんの自然

な格好や自由な動きを妨げないように気をつけて育児をしていきましょう。

 

 とみもと小児科クリニック母乳育児支援外来  Takako Furukawa (^0_0^)