母乳育児を支援しよう

大きいことはいいことだ?

ー初めてのおじいちゃん、おばあちゃんへ―

今日の話題は昭和の時代のことです。当時は高度経済成長の真っただ中にあって、人々は物質的な豊かさに初めて触れ、「大きいこと」「豊かなこと」が素晴らしいことのように言われていました。チョコレートは「大きいことはいいことだ」と宣伝し、太った大きな赤ちゃんが表彰される「赤ちゃんコンクール」が全国で行なわれていました。小さく生まれた赤ちゃんも「小さく産んで大きく育てる」とばかりに栄養価の高い人工乳が与えられました。この時代には人工乳は栄養的に母乳より優れているとされ、経済的に豊かになった国民には人工乳に対する栄養信仰のようなものが作られていきました。

 

今、その頃の大きな赤ちゃん達は、さらに年を重ねてオジちゃんやオバちゃんになりました。中には健診でメタボとされる人もいます。赤ちゃんの時の栄養過多がメタボ予備軍を作っていたのです。メタボのオジちゃん・オバちゃんは自らは病院からダイエットを指示されることになりますが、孫として生まれた赤ちゃんのことになると昔の人工乳に対する栄養信仰が頭をもたげてきます。

深夜に泣く赤ちゃんを持てあましている母

夫「う~ん、今何時?何で泣いてんの?近所迷惑だろ。俺、明日は早番だぜ―」

母「どうしても泣きやまなくて・・どっか悪いとこでもあるのかしら」

夫「お腹すいてんじゃないの?おっぱいやったら?」

母「さっきからやってるんだけど、泣きやまないのよ」

騒ぎを聞きつけてきて姑が起きてくる。

姑「おっぱい出てないんじゃないの?」

母「お義母さん、この間の健診ではちゃんと体重も増えてるから、母乳も十分出てますよって言われたんですよ」

姑「体重増えてるって言ったって、こんなに痩せてるじゃない。あんたがあんまり母乳にこだわるから・・足りないのよ、母乳が。ミルクの方がずっと栄養価が高いんだから」(だいたい、あんたも好き嫌いひどいんだから、あんたの母乳なんて栄養あるもんだか・・ま、これは言っちゃいけないか)

母「そうよね・・こんなに泣いてるんですものね・・」

かくして、訳もなく泣き続けたために、母乳を飲む権利を失った赤ちゃんがまた一人つくられました・・

WHOや日本小児科学会が母乳栄養推進を提唱するまでもなく、赤ちゃんにとっての栄養は母乳に勝るものはありません。しかし、多くの母親は生後1か月以内といったわりと早期に母乳育児を断念します。この最大の理由は母乳が出ていないのではないか?といった「母乳不足感」です。実際には充分な母乳が作られているにもかかわらず、赤ちゃんが泣いたり、ぐずったりすることで「母乳不足」の思い込みに陥ります。生後6ヶ月くらいまでの赤ちゃんは訳もなく泣くことがあります。お腹がすいているわけではありません。この現象を理解して、体重増加を適切に評価することで母乳不足の誤解は避けられます。また、初孫を持ったおじいちゃん、おばあちゃんは人工乳に対する栄養信仰を捨て、母乳の利点と欠点をきちんと理解した上で、新しくお母さんになったお嫁さんを応援してもらわなければなりません。あなた方のお孫さんのために。

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